JOURNAL

2024年版
水難事故防止アドバイス

子どもは静かに溺れる──「本能的溺水反応」とは?

夏のレジャーが楽しい季節になりました。しかし毎年この時期に繰り返し伝えたいことがあります。それは「水の事故はすぐそばにある」ということです。

子どもは驚くほど静かに溺れます。これは「本能的溺水反応[※1]」と呼ばれるもので、大きな声で助けを求めたりバシャバシャと暴れることがないため、周囲が気づきにくいのです。

たとえば、水深2.5cmでも子どもは溺れる可能性[※2]があります。たった数秒で命を落とすことも。これは決して大げさではありません。

ライフジャケットは「浮いて遊ぶもの」ではない

ライフジャケットを着ているからといって安全とは限りません。ほとんどの人が浮いて流れにそって遊ぶために使っている場面が多く見られます。

しかしライフジャケットは遊具ではありません。
もしもの場合に呼吸をするための最低限の浮力を確保するための緊急用具です。

岩に挟まれたり、強い流れに引き込まれた場合、紐やベストが引っかかれば浮かび上がれないこともあります。「浮いていれば安心」ではなく、「どう行動するか、どう備えるか」が問われます。救命講習も含め、正しい知識を持つことが生死を分けます。

50%の死亡・行方不明率という現実

水難事故による死亡や行方不明の確率は、実に50%近い[※3]とも言われています。お子様が二人いるなら、恋人とふたりで海に行くなら、そのリスクを冷静に受け止める必要があります。

海や川では、一緒に遊んでいた人ではなく「助けに入った人」だけが亡くなるケースも珍しくありません。これは本当に怖い現実です。自然の中で遊ぶことは楽しいことです。しかし、「自然はときに牙をむくものだ」という意識も持っていなければなりません。

予防と準備、そして正しい意識。これこそが、大切な人の命を守る最初の一歩です。

今回の視点 – 見えないモノをキャッチする?

水の中の状態、それと人間の心理、日常では見ることのない被害予想など、普段目にすることができないことを考えてみよう。

2024年のキーワードはこの3つ

  • 水難事故は男性が多い!?(子供と好奇心の共有)
  • 足がついていても危険な「崩れ砂」
  • 水難事故マップを見てみよう

水難事故は男性が圧倒的に多い!

性差で語るのは避けたいところですが、事実でいうと水難事故の多くは男性が多い[※4]のです。理由は以下のようなものが考えられます。

  • 能力の過信
  • 好奇心
  • モテたい(かっこつけ)

「泳ぎが得意」と思っていても、それは水着で整備されたプールの話。洋服を着た状態や流れのある水中で泳いだ経験がなければ意味がありません。海では流れが変われば一気に流されることも。あなたの「大丈夫」は、平常時限定のものかもしれません。

そして、「子どもの好奇心」にも要注意です。
主観ではありますが、男子は一人で勝手な行動をしないよう、「好奇心の共有」を心がけましょう。

子どもが何かに興味を持ったとき、気軽に「一緒に見に行こう」と言える関係性。
親に報告・相談できるコミュニケーションは安全対策としてはかかせません。

足がついていても安心じゃない!「崩れ砂」の怖さ

川や海の水辺で、足元が突然崩れる崩れ砂[※5]は非常に危険です。特に海では引き波や満ち引きの影響で、知らない間に深みに引き込まれることも。

子どもだけでなく大人も、潮の満ち引きや地形の変化には注意が必要です。海水浴に行く前には、潮の情報を必ずチェックするようにしましょう。

水難事故マップを見てみよう

アウトドアの計画を立てるときは、ポジティブな情報だけでなくネガティブな情報も一緒に調べましょう。おすすめは以下の水難事故マップ[※6]です:

河川財団「全国の水難事故マップ」
朝日新聞「水難事故マップ」

事故が起きやすい場所を事前に知っておくだけで、危険を回避する確率は格段に上がります。

対自然は「自分ごと」として受け止める

自然の事故を防ぐために大切なことは、ニュースや警告を「他人事」でなく「自分事」として受け取る姿勢です。

  • 正しいライフジャケットの装着
  • 水辺のルール作り
  • 親子間の声かけ
  • 見守り体制の徹底
  • そして救命講習の受講

これらは全て、ほんの数秒の出来事から命を守るための備えです。

東京消防庁 救命講習情報

特に「上級救命講習(乳児・幼児対応可)」の受講をおすすめします。

出来事は一瞬、後悔は一生

ライフジャケットを着ける、子どもから目を離さない。スマホはポケットにしまって、一緒に遊びましょう。写真は後で加工すればいい。命は取り戻せません。

多く体験者は言います。「まさか、数秒目を離しただけだった」と。

今年も、楽しく、安全な夏を過ごすために。
ぜひ、大切な人と共有してください。

総評

非日常には楽しみがあります。普段できないことは開放感ならでは。
やることが非日常なら、やはり考え方、行動の仕方もいつもとは違う視点で考えることが必要です。

あれやってはダメ、これやってはダメ、とすぐに正論や結論を押しつけるのではなく。
あれをやるなら、こうやろう。 というルールだったり。
これをやるなら、どこに気をつけようか?とクイズ形式にしてみたり。

“自由に遊ばせる” でなく、“自然で遊ばせる” ということ。
日常の公園にある遊具は人工物変化しません。遊び方も、状態も基本いつも通り。
だけど人工物でない自然は変化します。 自然の中では変化に対応できないものは消えてなくなります。
その土地や風土にあわせて植物も動物も進化しながら生きながらえている。

進化・変化を楽しむようになれば、きっとそれは経験値となり、予測や対処ができるようになる。
それが俗に言う「サバイバル」≒変化対応能力 なのではと思います。

是非、お子様とは、いろいろな変化を楽しんでください。
川の中でも一歩横にずれたら勢いが違う、 少し離れて伝言ゲームすると川の音で聞き取りづらくなるとか。
遊具が無くてもやれること、たくさん見つけましょう。

問いと選択肢

問い

  • 女性の水難事故の理由はなんだろう?
  • 立っていられる川の深さはどれくらいだろう?
  • 携帯落としたら水の中でもGPSってつかえるの?

選択肢

  • 普通の洋服で水に入ってみる(大人向け訓練)
  • ハザードマップって色々なハザードがってマップが違うから調べる。
  • 遊びの家族ルールを作る。

参考文献・出典・注釈

  1. 項目名
    本能的溺水反応
    発行元
    教えて!ドクター(2017年)
  2. 項目名
    溺水は2.5 cm以上の水深でも起こり得る
    発行元
    日本小児科学会
  3. 項目名
    2024年夏季 水難事故の実態調査
    発行元
    日本財団 海のそなえプロジェクト(2024年9月4日)
  4. 項目名
    溺水者は男性が女性の約5倍
    発行元
    日本財団 海のそなえプロジェクト(2024年9月4日)
  5. 項目名
    河川における「崩れ砂」の危険性
    発行元
    朝日新聞(2024年7月20日)
  6. 項目名
    全国の水難事故マップ
    発行元
    河川財団
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